うめき
空はいと低うなりて すさまじく雨ふりそゝぐ
多楼台のカメロットに
姫は高どのをおりきて しだれたる柳のかげに
主もなくたゞよへる 小さき舟を見いだしつ
さて 其の舟の舳のめぐりに 姫は書きぬ
シャロットの島姫と
かくて 蒼茫たる川のあなたカメロットの方を
予《あらかじ》めおのがわざはひを知悉せる ある膽太き予言者の
斯うと観念せる時のやうに
玻璃の如き面地して
姫はカメロットの方を見つめき
かくて その日のくれがたに
つなげるくさりを解きて 姫は舟底に 打臥しぬ
滔々たる河水は 姫を載せて はるかあなたへと流れ去りぬ
此のシャロットの姫を載せて
打臥して 雪よりも白き衣きて
右に左に ゆた/\とひるがへる
かろやかに散りかゝる木の葉のしたに
さはがしき夜宴のもなかに
姫はカメロットへ流れゆきぬ
さて 姫が乗れる舟の 垂柳の岡に添ひ麦畑の間を経て
めぐり/\て下りける時
城内の人々は いまはの歌をうたふ姫をきゝぬ
歌うたふシャロットの姫を
聴きぬ 神の徳たゝふる歌を かなしうもたふとげなる
はじめは高く 後には低く歌はれし歌を
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