妖しの姫はいへりけり
其の三
矢ごろばかりに 姫が住む たかどのゝ軒端より
彼の人は騎馬にてゆきぬ 大麦の穂の間を
日の光 まばゆくも葉越しに射して
きらめきぬ 黄銅の胸当の上に
勇敢なるサー・ランセロットが胸当の上に
一個の赤十字架のものゝふ 常に 一佳人の脚下に
跪座せり 彼れが持てる楯の面に
その楯 燦爛たり 黄ばめる畑に映じて
はるかなるシャロットの島外に
珠玉を鏤めたる手づなは くまもなくきらめきぬ
とある連なれる星のやうに 我れ人の
懸かるを見る 彼の黄金なす天の河に
此の手綱に附けたる鈴 心浮き立つやうに鳴りひゞきぬ
カメロットへ志して 彼れが駒を進めける時
また 其の盛飾せる革帯よりは つるされて
一のいみじき白がねの角ぶえぞ 懸かりたる
かくて 駒の進むにつれて 物の具は鏘々として鳴りわたりぬ
かなたシャロットの島辺までも
なべて 青空の 雲もなく晴れたる日に
しげく珠玉もて飾られて 輝けり 鞍のなめし革は
兜も 兜の羽根飾りも
炎々たり 合して一団の猛火の如く
カメロットへ志して 彼れが駒を進めける時
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