めんのなのはな。


  誘 惑

ほのかなる月の觸手
薔薇の陰影《かげ》のじふてりあ[#「じふてりあ」に傍点]
みなそこでなくした瞳
それらが壺にみちあふれる。
榲※[#「※」は「木へん+孛」、90−21]のふくらみ
空間のたるみ
そして愛の重み
蟲めがねの中なる悲哀。


  冬

ふところに電流を仕掛け
眞珠頸飾りのいりゆじよん[#「いりゆじよん」に傍点]
ひかりまばゆし
ぬつとつき出せ
餓ゑた水晶のその手を……
おお酒杯
何といふ間抜けな雪だ
何と……凝視《みつむ》るゆびさきの噴水。


  いのり

つりばりぞそらよりたれつ
まぼろしのこがねのうをら
さみしさに
さみしさに
そのはりをのみ。



底本:「山村暮鳥全集第一巻」筑摩書房
   1989(平成元)年6月9日初版第1刷発行
底本の親本:「聖三稜玻璃」人魚詩社
   1915(大正4)年12月10日発行
入力:泉井小太郎
校正:泉井小太郎、富田倫生
ファイル作成:富田倫生
2000年1月31日公開
2001年3月17日修正
青空文庫作成ファイル:
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