ら、もしそういう響《ひびき》を聞けば、直《すぐ》に家人は勿論《もちろん》、門弟一同に深く注意を与えて、前《ぜん》以《もっ》て種々《いろいろ》予防を為《す》る、幸いそれで何も起らない場合もあるが、多くは何処《どこ》か眼の届かなかった処《ところ》とか、如何《どう》しても避けられぬ事、例えば他人《ひと》から預っておいた彫刻品が、気候の為《た》めに欠損《きず》が出来たとかいう様な、人力《じんりょく》では、如何《どう》にも致方《しかた》の無い事が起るのである、この談《はなし》をすると、よく友人|輩《たち》は一口《ひとくち》に「君、それは鼠だろう」と貶《けな》してしまう、成程《なるほど》鼠の居《お》るべき処《ところ》なら鼠の所業《しわざ》かと合点《がてん》もするが、鼠の居《お》るべからざる処《ところ》でも、往々《おうおう》にして聞くのだ、私は他人《ひと》の家へ談話《はなし》に行っていて、それを聞いた時もあるので、私は家人に「御宅《おたく》では、こんなに昼間鼠が騒ぎますか」と訊ねて「いいえ、そんな事はありません」と云う様なことを聞いた事も度々《たびたび》ある、仮令《よし》、それが鼠としても、私の身辺
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