ミケル祭の聖者
片山廣子
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《》:ルビ
(例)聖《セント》
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九月二十八日はミケルマス(ミケル祭)といつて、聖《セント》マイケルを記念する祭日である。むかしはミケルマスの前夜にはたいそう賑やかな催しがあり、幾組かのあたらしい婚約者も出来あがる慣はしであつたさうだが、現代ではどの聖者の祭日もみんな同じやうなもので、先づおミサに始つて、それから家々で飲んだり食べたり騒いだりするものらしい。
おもてむきの解説では聖《セント》マイケルはキリスト教の聖者であるが、ほんとうはもつとずうつと古い、異教時代の神か英雄であつたらしく、マイケルを祭る儀式といふのは非常に古いふるいにほひを持つてをり、ミケル祭の供へ物に仔羊を殺すしきたりも、或はキリスト教以前にはもつと野蛮な捧げものをしたのかとも疑はれる。
フィオナ・マクレオドはイオナ島について書いてゐる中で、聖《セント》マイケルは大古の海洋の支配者マナナーンと同じ存在であつたらうと言つてゐる。おもて向きには聖《セント
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