ぎやか》さである。鰌《どじょう》と鮒《ふな》と時には大きな鰻《うなぎ》が釣れるという事だ。私たちは水際《みずぎわ》を廻って崖の方へ通ずる小径《こみち》を攀登《よじのぼ》って行くと、大木の根方《ねがた》に爺《じじい》が一人腰をかけて釣道具に駄菓子やパンなどを売っている。機を見るに敏なるこの親爺《おやじ》の商法にさすがのわれわれも聊《いささ》か敬服して、その前に立止ったついで、猫塚の所在《ありか》を尋ねると、爺さんは既に案内者然たる調子で、崖の彼方《かなた》なる森蔭の小径を教え、なお猫塚といっても今は僅にかけた石の台を残すばかりだという事まで委《くわ》しく話してくれた。
 名所古蹟は何処《いずく》に限らず行って見れば大抵こんなものかと思うようなつまらぬものである。唯《ただ》その処まで尋ね到る間の道筋や周囲の光景及びそれに附随する感情等によって他日話の種となすに足るべき興味が繋《つな》がれるのである。有馬の猫塚は釣道具を売っている爺さんが話したよりも、来て見れば更につまらない石のかけらに過ぎなかった。果してそれが猫塚の台石《だいいし》であったか否かも甚だ不明な位であった。私たちは旧造兵廠の建
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