閑地にも緑柔き毛氈《もうせん》を延《の》べ、月の光あってその上に露の珠《たま》の刺繍《ぬいとり》をする。われら薄倖《はくこう》の詩人は田園においてよりも黄塵《こうじん》の都市において更に深く「自然」の恵みに感謝せねばならぬ。
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     第九 崖

 数ある江戸名所案内記中その最も古い方に属する『紫《むらさき》の一本《ひともと》』や『江戸惣鹿子大全《えどそうがのこたいぜん》』なぞを見ると、坂、山、窪《くぼ》、堀、池、橋なぞいう分類の下《もと》に江戸の地理古蹟名所の説明をしている。しかしその分類は例えば谷という処に日比谷《ひびや》、谷中《やなか》、渋谷《しぶや》、雑司《ぞうし》ヶ|谷《や》なぞを編入したように、地理よりも実は地名の文字《もんじ》から来る遊戯的興味に基《もとづ》いた処が尠《すくな》くない。かくの如きはけだし江戸軽文学のいかなるものにも必ず発見せられるその特徴である。
 私は既に期せずして東京の水と路地《ろじ》と、つづいて閑地《あきち》に対する興味をばやや分類的に記述したので、ここにもう一つ崖なる文章を付加えて見よう。
 崖は閑地や路地と同じようにわが日和下駄
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