小説作法
永井荷風

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)画《え》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)洋画|手引草《てびきぐさ》

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[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
一 小説はいかにして作るものなるやどういふ風にして書《かく》ものなりやと問はるる人しばしばあり。これほど答へにくき問はなし。画《え》の道ならば『芥子園画伝《かいしえんがでん》』をそのままに説きもいづべく油画ならばまづ写生の仕方光線の取方絵具の調合なんど鴎外《おうがい》西崖《せいがい》両先生が『洋画|手引草《てびきぐさ》』にも記されたりと逃げもすべきに、小説かく道といひては原稿紙買ふ時西洋紙はよしたまへ、日本紙ならば反古《ほご》も押入の壁や古葛籠《ふるつづら》が張れて徳用とも答へがたく、さりとて万年筆は何じるしがよしともいひにくかるべし。
一 おのれいまだ一度《ひとたび》も小説家といふ看板かけた事はなけれど思へば二十年来くだらぬもの書きて売りしより、税務署に
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