止めるのも聞かずに、到頭《たうとう》三鞭酒《シヤンパンしゆ》を二本ばかり抜いた。流石《さすが》西洋通だけあつて葡萄酒だの、三鞭酒なぞの名前は委《くは》しいもんだ。』
 弁者《べんしや》は語り了つて、再び雑煮の箸を取上げた。一座|暫《しばら》くは無言の中に、女心の何につけても感じ易いと見えて、頭取の夫人の吐く溜息のみが、際立つて聞えた。
[#地付き](明治四十年五月)



底本:「花の名随筆1 一月の花」作品社
   1998(平成10)年11月30日初版第1刷発行
底本の親本:「荷風全集 第四巻」岩波書店
   1992(平成4)年7月発行
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2009年12月9日作成
青空文庫作成ファイル:
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