ださい」
「この人は死んだ赤ちゃんを、まだ生きていると思っているのだわ」
看護婦は気の毒そうに微笑みながら言った。
「で、この人の言う、その松島という人はいったいどうしたんだい? 生きているのかい? 死んだのかい?」
看護人が真面目な顔で訊いた。
「それがはっきり分れば、この病人は治せるって院長先生はおっしゃっているのよ」
「はっきり分かれば治るんですって? よし! おれが行って話してやる。はっきりと、何もかも話してやる。洗い浚《ざら》い話してやる」
彼は叫ぶように言いながら、ひどく昂奮《こうふん》した。彼は顔を赤くして、投げ出すような歩調で看護婦たちのほうへ歩み寄っていった。
底本:「恐怖城 他5編」春陽文庫、春陽堂書店
1995(平成7)年8月10日初版
入力:大野晋
校正:吉田亜津美
1999年7月17日公開
2005年12月24日修正
青空文庫作成ファイル:
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