》むようにして[#「偸《ぬす》むようにして」は底本では「倫《ぬす》むようにして」]、他家《よそ》の飼い馬の、飼料を採って来てやったり、河へその脚を冷《ひ》やしに曳いて行ってやったりするのであった。部落の人達も、植付期《うえつけどき》とか収穫期《とりいれどき》とかの、農繁期になると、子供の馬方《うまかた》で間に合うようなときには、伝平をわざわざ頼みに来た。
*
伝平が稼ぐようになってからも、伝平の家では、馬を飼うことなどはとても覚束《おぼつか》なかった。僅かばかりの田圃を小作しているのであったが、それだけではどうにも暮らしがつかないので、伝平はよく日傭《ひでま》に出された。そして伝平は、雀が餌を運ぶようにして、三十銭五十銭と持って帰るのであったが、その端金《はしたがね》はまるで焼け石へじゅうじゅうと水を滴らすようなものであった。
「お母《が》あ! 俺が日傭《ひでま》で取って来た銭《ぜに》だけは蓄《た》めでてけれ。馬を買うのだから。」
伝平はそんな風に言うのだった。
「蓄めで置きてえのは山々だどもよ。ふんだが、馬を買うのにあ、三月《みつき》も四月《よつき》も、飲まず食わず
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