殺人迷路
(連作探偵小説第九回)
佐左木俊郎
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)憂鬱《ゆううつ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)五万円|籠抜《かごぬけ》
[#]:入力者注 主に外字の注記や傍点の位置の指定
(例)五万円かたられた[#「かたられた」に傍点]
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洋装の女
どこで何をしていたのか、新聞記者の村井は、星田代二が検事の第一回訊問を受けた日、彼が警視庁へかえされたのと入れちがいに、検事局の構内に姿を現わした。しかも、彼は、今日がはじめての訪問ではないらしく、わき眼もふらず、真直ぐに、二木検事の調室に歩いて行って、特長のあるドアの叩き方をした。
書記がドアを開いた。
「どうだった、君?」
勝ち誇ったように、村井は微笑した。
「うむ」
と、村井を握手で迎えながら、二木検事の理智的な額を、憂鬱《ゆううつ》の影が掠《かす》めた。
「全く驚いたよ。山川牧太郎が星田代二だとは。七年来お尋ね者の、五万円|籠抜《かごぬけ》詐欺犯人が、大きな面をして、この帝都の真中にのさばっていようとは、誰だって考え及ばないからね」
「そこ
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