ませんよ。こんなに磨り滅ってしまいました。」
「貴女でしたか? それで貴女は、今、どこで何をしておいでになりますね。」
「月寒で、ほんのつまらない店をもって、お茶屋をやっています。すぐですからどうぞお寄りになって、ゆっくり、お茶でもあがって行って下さいましよ。それはそれは、あの時の方は、貴方でございましたか?」
 馬車はもう月寒の町並に這入っていた。
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――昭和六年(一九三一年)九月『北海タイムス』、
  十月『河北新報』――
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底本:「佐左木俊郎選集」英宝社
   1984(昭和59)年4月14日初版発行
初出:「北海タイムス」
   1931(昭和6年)9月
   「河北新報」
   1931(昭和6年)10月
入力:大野晋
校正:鈴木伸吾
1999年9月24日公開
2003年10月21日修正
青空文庫作成ファイル:
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