「どうする?」
「追いかけましょう」
「おい! 追っかけよう。野郎を谷底へ投げ込んでしまえ?」
常三がそう叫びながら、二人の前に駆け戻ってきた。
「それじゃ、銘々に鉄砲を持って……」
敬二郎はそう言いながら、厩舎の中へ駆け込んだ。
厩舎の中には、三匹の馬が鞍《くら》を置いて隠されていた。猟銃も弾嚢帯《だんのうたい》と一緒にそこに置かれてあった。三人は胴に弾嚢帯を巻きつけると、銃を握って馬に跨《またが》った。
「山の中へ、山の中へ追い込むようにしなけりゃ!」
敬二郎はそう言って、花房の胴にぐいっと拍車を打ち込んだ。三匹の馬は黒土を蹴起《けお》こしながら駆けだした。
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第七章
1
砂煙を蹴上《けあ》げながら、毬《まり》のように駆け飛んで吾助茶屋《ごすけぢゃや》の前まで来ると、正勝は馬の背にしがみつくようにしながらぐっと手綱を引いた。馬は喘《あえ》いで立ち上がるようにしながら止まった。次の瞬間、正勝はぱっと身を翻して道の上へ飛び下りた。そして、正勝は馬をそのままにしておいて、茶屋の中へ飛び込んだ。
茶屋の中の薄暗い土間には、開墾場の人たちが五、六人ばかり炉を囲んでいた。
「どうなさいましたよ?」
吾助|爺《じい》は正勝の突然の闖入《ちんにゅう》に驚いて、目を瞠《みは》りながら言った。
「鉄砲なんか持って?」
「敬二郎の奴《やつ》らがおれがいちゃ邪魔なもんだから、おれを殺そうというんだ」
正勝は喘ぎながら言った。
「殺すってね?」
「おれだって、おめおめと殺されちゃいねえさ。野郎どもめ! どうしてくれるか……」
正勝はそう言って、戸口から路上へ向けて銃口を突き出した。
「正勝さんを殺そうなんて、敬二郎の野郎はなんて野郎だべなあ」
だれかが叫んだ。そして、開墾場の人たちは総立ちになった。
「逆に、敬二郎の野郎をぶっ倒してやれ」
開墾場の人たちは罵《ののし》りながら、土間の隅から薪《まき》を引っ掴《つか》んだ。
「大丈夫だよ。おれだっておめおめと殺されちゃいねえから」
「なんだってまた敬二郎の奴は、あんたを殺そうというんです?」
開墾場の人たちはそう言いながら、路上に向けて銃を構えている正勝の後ろへと寄っていった。
「敬二郎の奴はこの機会に、森谷の財産を完全に受け継ごうとしているんだ。それには、おれがいたんじゃ邪
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