とうこ》に謁《えつ》す、東湖は重瞳子《ちやうどうし》、躯幹《くかん》魁傑《くわいけつ》にして、黄麻《わうま》の外套《ぐわいとう》を被《き》、朱室《しゆざや》の長劒《ちやうけん》を佩《さ》して南洲を邀《むか》ふ。南洲一見して瞿然《くぜん》たり。乃ち室内に入る、一大白を屬《ぞく》して酒《さけ》を侑《すゝ》めらる。南洲は素《も》と飮《いん》を解《かい》せず、強《し》ひて之を盡《つく》す、忽《たちま》ち酩酊《めいてい》して嘔吐《おうど》席《せき》を汚《けが》す。東湖は南洲の朴率《ぼくそつ》にして飾《かざ》るところなきを見て酷《はなは》だ之を愛《あい》す。嘗て曰ふ、他日我が志を繼《つ》ぐ者は獨此の少年子のみと。南洲も亦曰ふ、天下|眞《しん》に畏《おそ》る可き者なし、唯《たゞ》畏る可き者は東湖一人のみと。二子の言、夢寐《むび》相|感《かん》ずる者か。
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三二 不[#レ]起[#二]妄念[#一]是敬。妄念不[#レ]起是誠。
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〔譯〕妄念《ばうねん》を起さゞるは是れ敬《けい》なり。妄念起らざ
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