いきれもなくなることでござりましょう」に傍点]」
 ……思わず私は息を呑み、ウーと低く言った。草いきれそのもの、あの青臭く焦々《ぢりぢり》したあの匂いをば、決して多くの人たちは夏の象徴としてよろこんでいるものでないということをはじめて認識したからである。そうして、この時ほど、ハッキリ「認識」という言葉が、ピッタリと私の胸にきたこともまたない。



底本:「寄席囃子 正岡容寄席随筆集」河出文庫、河出書房新社
   2007(平成19)年9月20日初版発行
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2009年1月7日作成
青空文庫作成ファイル:
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