役者の顔
木村荘八

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)平馬《へいま》

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(例)※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1−91−26]
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 羽左衛門を失ったことを転機として――戦争を転機としてと云えば早いが、それではニベも無い――俳優の「顔」も変ったと思います。「俳優」もここには主として歌舞伎(旧劇)畑を云いますが、「顔」を材料にとって述べれば、自然歌舞伎俳優が主となるのは定法でもありましょう。
 羽左衛門は、思えば寂しい中で亡くなりました。羽左衛門の死については、文壇で云えば藤村がそうだったように、当時、戦雲の濃い中だったに拘らず、新聞の報道などに、さすがに大見出しで取扱われたものでした。――しかしこの名優の死は(日本の歌舞伎の歴史から云って)何と云っても慌だしかった戦雲の中で考えられるには過ぎた問題でした。例えばその「顔」だけの問題についても、われわれは再考三考すべき多くの材題をそこに持っているようです。
 簡言
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