が戦災後の世相か。
 昼頃までは晴れてゐた空が午後から雨模様になつてゐた折柄、一丁目から歩道を歩いてゐるうちに、雨足繁く、夕立になつて来た、露店商人が急に店の取片付けも成らず、テント張りのまゝぬれてゐる午下りの景色は、これまで見かけないものである。斜向うの電車道を越した通りを見ると、片屋根のスマートな、しかし見るからに植民地風な――店舗の飾窓の凹みに、三々五々人が雨宿りに駈込んで空の様子を見てゐる。柳がひよろひよろと雨の中に立つて新芽をつけてゐる。
[#銀座の柳の図(fig47597_02.png)入る]
 結局柳だけが昔と変らない銀座風景だつたかもしれない。



底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房
   1978(昭和53)年3月29日第1刷発行
   1989(平成元)年8月12日第2刷発行
底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社
   1949(昭和24)年2月20日発行
※図版は、底本の親本からとりました。
入力:門田裕志
校正:伊藤時也
2009年1月6日作成
青空文庫作成ファイル:
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