いずれもデキの、向うの品ものがそのままこっちへ渡るというだけの、帽子、服の類のことであるから、少し手が短かいとか、足が長いとかいう位の寸法違いは、洋服を着ようともある新人にとって当時あたり前の、辛抱しなければならないことで、渋沢さんは或る時、或る外国使臣の宴会へ行ったそうだが、他のものはそれぞれ招じられて席へつくのに、いつまで経っても自分を案内してくれないという。その時渋沢さんの一着していた洋服が、急いで買いこしらえた、コックや給仕の着る服装だったということである。
はるばるこの辺の「欧化」からたどりついた明治三十年―四十年の間の、「ハイカラ」モード風俗は、今から見れば相当おかしな「好男子ぶり」とは云っても、兎に角よくもそこまで短期間に進歩したものではあった。[#地付き]〔昭和二十三年〕
底本:「日本の名随筆 別巻95 明治」作品社
1999(平成11)年1月25日第1刷発行
底本の親本:「木村荘八全集 第五巻」講談社
1982(昭和57)年9月
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2008年12月12日作成
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