んだ夕刊だ。それが、あんた、今さっき気が附いたんだから、なんとも早や。……眼に入っちまったと言うか。舟木さんの奥さんも、そうだそうだ。ねえ? (織子を見る。織子声が出ないでコックリをする)……どう言うもんか、この――(私に)そうなんでしょう。これ?
私 ……(新聞に吸いつけられている。省三はキョトキョトその辺を見まわしはじめる……間)
若宮 まったく、どうも、この――
私 ……(ユックリ顔を上げて)そいで――?
若宮 え? ……いや、柳子さんとこの広間で、もうズーッと花で。うちの房代も行ってる。
省三 兄さんは――?
織子 た、たばこ買いに。すこし歩いて来ると言って出かけて。……
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(四人が黙ってしまう。私だけが遠い所を見つめているだけで、他の三人は互いが互いに何か珍らしいものででもあるように見くらべ合っている)
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     9 柳子の室

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(緋のじゅうたんの中央に座ぶとんを一枚置き、それを取りかこんで浮山、柳子、房代、須永の順に坐り花札を戦わしている。浮山はおりて見ている。わきの椅子に桃子が掛け、フルートを時々撫
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