ねえ、いよいよとなって、どんな風に出て来るんだろう? それが私、気になる。
浮山 あれはしかし、せいぜい死んだ伯父さんとの関係を言い立てて土地の少しも分けてもらって、それで病院でも立てようと言うだけのなんだろうから――
柳子 そうかしら? だって、あんな妙な、先生なんて人まで引きずり込んで来たりして、何かと自分の味方をふやしといて――
浮山 そりゃ、違うだろ。あの先生は奥さんを取られた後ボンヤリして、そいで行く所が無いから、あれはあれだけの人だと思うなあ。
柳子 そうかしら。……どっちせ、広島のおばさんが今のようじゃ、あれもこれも、さしあたりどうにもならないわね。
浮山 そう、所有権は伯母が握ってんだからな、あいでも、変なもんだな、こんだけの家屋敷が、もう死んだも同然の、ただ息をしているだけの伯母に握られて、どうにも出来ないんだからなあ。……しかし、そんな事よりお柳さん、今言った、なんとか一つ、資金をさ、お願い出来ないかなあ。年二割位の利息は払えると思う。それも一度に貸してくれなくても、最初は五万ぐらいで結構だけどね。
柳子 出してあげてもいいけど、でも近頃少しひっぱくしてるのよ。こないだ、少し大口の糸へんで、ちょっとガッちゃったし、それに、あたしにゃ、年二割なんて気の永い話はダメ。いえ、金が寝るのが惜しいなんて言うよりも、スリルが無いので、つまんない。
浮山 だって一つ位、気永に構えた仕事を持っていても悪くはないだろう。これでもうまく行って少し大きくやれば立派に一つの事業なんだから。
柳子 でも、その今の、私のだいっ嫌いなヌルヌルを拵える仕事に金を廻すなんて、フフ、いやだなあ。
浮山 ハハ、そりゃ、しかし、これだけじゃないもの。温室の方のランの方も、もう少し手広くして、新種をもっと入れたいし、そのほか、いろいろあるし――
柳子 ランね? ランは綺麗でいいけど、でもあたしなぞとは益々縁は無い。
浮山 頼みますよ。ね! その方が、若宮君などを、大きに手足のように使っているつもりでいて、時々ノマれたりしているよりゃ、いいんじゃないですか。
柳子 若宮がノム? 冗談でしょ。そりゃ、ほかのお客のはノンだりしているかも知れないけど、あたしの分を、へ、そんなアコギな事、させやしない。誰だと思ってるの、ハハ。こいでも、あんた――
6 若宮の室
若宮 (大あぐらでウィ
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