美人でも選り取り見取りつてわけね。
利男 (頭を掻きながら)なんだ、ひでえなあ!……でもなんですね。見合ひの写真なんてものも、次から次と見せられると、なんだか変な気がしますね。
京子 どうして? そんな事無いでせう? だつて男に取つて得意の絶頂ぢやなくつて? さうぢやありませんか、この中からどれでも自分の気に入つた美人を選び出しさへすれば、それが一ヶ月後には自分の物になるんですもの。まるで英雄になるんですもの。これがエゝノウと言ひさへすれば、自分の前にチヤンと御馳走が並ぶんですものね。
利男 それが不愉快なんですよ。だつて、大概まあ一人一人、必ずしも美人では無いとしても、とにかく何処へ出しても耻かしくない娘さんでせう? それを次から次と、まあ、たかが写真だといへば、それまでなんですけれど、とにかく舐めまはすやうにして見て行くんです。……正直言つて、男が見合ひ写真を見ながら、腹の中で想像することなんか、どんなに醜悪なものか、とても人前で言へたもんぢやありませんからね。
京子 どうしてそれが醜悪なんでせう? 第一、その娘さんの方で、そんな風に見て貰ふ事を望んでゐるんぢやなくつて? 写真に限りやしないわ、現にその人を見ながらなら尚更ひどい所まで考へられる訳ぢやなくつて? それでいゝんぢやないかしら。
利男 そりや……なんですよ……その、愛情と言ふか恋愛と言ふか、そんな感情がともなつてゐる場合なら、それでいゝんですよ。しかし、いきなりそんな失敬な――。
京子 同じ事ぢやなくつて? それに、いきなり初めて見てその瞬間に恋愛なんて、そんな手の込んだ気持なんか起りつこ無いわけでしようし、無理だわ。
利男 それぢや、なんですか、……それぢや、えゝと――京子さん、現にですね、あなたがさうしてゐらつしやる所をですね、僕がですよ……僕が見てですね、どんな失敬な事を考へてもいゝんですか?
京子 (自分の半裸の身体を見廻して)……さうね、……どうぞ御自由に。……だつて、あなたの頭の中まで私が支配するわけには行かないんですから。……でも、私の方だつて、あなたがさうしてゐらつしやる所を見て、どんな事考へることだつて自由ですからね、相みたがひだわ。
利男 ……(立ち上つてモヂモヂしてゐる)そんな! そんな事言へば――。
京子 アツハハハ。ハハハ。
利男 ……そいぢや、京子さんは、結婚の前提としての
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