、だから、それでいいじゃないか。それよりも、さっき、此方でワイワイ言ってたなあ誰なの? どうしたの?
せい ……それは、あの、へんな人が犬小屋に――
欣二 え? 犬小屋――?
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(そこへ、顔の色を変えた双葉が、上手扉から小走りに入って来て、急いで炊事場へ行き、そこの棚の奥の鼠入らずのようになった個所をカタカタ言わせて開ける。室内の三人びっくりしてそれを見ている)
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双葉 ……(かなり大きなアルミのボールのカラのやつを引き出して、ああやっぱりと言った、一度ガックリと落胆した顔)ああ!
欣二 ……どうしたんだい?
双葉 ……うん。……(しばらくボンヤリしていたが、やがて耐えきれなくなって声をあげて泣き出す)
せい まあ、どうしたの、フーちゃん? どうして、そんな――? どうしたんですの? (双葉に寄って、その肩に手をかけ顔をのぞき込む)
柴田 (奥の出入口から入って来て、電燈がついているのでニコニコして)やあ、ついたな。――(しかし直ぐに、双葉の泣いているのに気附いて、びっくりして)……全体――?
双葉 これ! (と、せい子に、からのボールを示す)けさ、ふかしたパン。
せい パンが、しかし、どう――?
双葉 取られちまったの。……夕御飯に、みんな食べる物が無い。……(せい子、事情がわかってハッとしてその辺を見まわす)
柴田 (寄って来て)どうした?
三平 ……(上手扉からスタスタ入って来て、炊事場の双葉とせい子に眼をやり、すぐに事情がわかって)ああ、やっぱり、あいつが、やっちまったのか!
誠 どうしたんです?
三平 なに、なんにも言わんけどね――(何か問いかけそうにする柴田に向って)おお、ホーボ! (身をひるがえして扉を出て行く)
せい ですけども、あんだけのパンを。たりないながら、とにかく五人分ばかり有ったのを――
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(言っている所へ、三平が、きたないなりをした若い男の肩をこづくようにして連れて入って来る。そのうしろから圭子が入って来る。若い男はズボンをはき、藁くずなどの取りついたクシャクシャの頭髪に、真黒によごれたはだし。捕えられたための悪びれた様子は全くなく、ただいぶかるような表情の氷りついたようになった瞳で、喋る相手をキョトリと見ている。最後まで一言も言わないが、それは、言うべき事を持っていなが
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