なんとか他に方法は無いもんかねえ?
三平 そら始まった。
柴田 いやいや、私の言うのはだな――
三平 たいがいにしなさいよ、あなたも。ねえ誠君?(誠、答えず。うつむいて鉛筆を動かしている)そうでしょぅ? 生命をつないで行くために、人間がしちゃいけない事なんか、世の中に何一つ有りゃしませんよ。
柴田 しかし、どうせ闇屋などをしても、ホンの一時のことだろう。それよりも、なんとかこのチャンとした方針を立ててだなあ――
三平 人世、すべて、その一時でないことがありますかねえ。時にこうした有様の現在とあって見りゃ尚の事。昨日は夢の如く、明日はどうなり行くか、双葉じゃないがアラアの神も御存じなしです。チャンとした方針などが有り得ると考えることからして一つの妄想だねえ。強いて方針と言やあ、一刻々々と次々にどんなに奇妙な、どんな奇怪な事が起きてもですね、――たとえばアラフラ海の海底から四斗樽ほどの海蛇が出しぬけに此処へやって来て、一緒にダンスを踊りましょうと申し出てもだね、又、一時間もして不意に私がアモックにとっつかれて、そこの薪割りかなんかで兄さんをはじめあなた方全部を皆殺しにしてもですね、今更びっくりしないと言う事だなあ。
柴田 また、でたらめな事を――
三平 でたらめだとしても、そいつは私のせいじゃない。今の時代がそうなんだ。人間は、何百万のお仲間の人間を殺したばっかりのところでね。
誠 (眼をあげないで)南米ゴロ的な詭弁だ。
三平 (ジロジロと誠を見る)……「南米ゴロ的」は、君の言う通りだ。しかし詭弁じゃないね。
誠 戦争を計画し挑発したのはファッショですよ。
三平 そりゃ、そうのようだがね。結果さ、私の言っているのは。つまり人類だ、人類が人類を殺したと言う全体としての事実は、どういう事になるんだい?
誠 そんな人道主義的な戦争観自体がファッショです。
三平 (……誠の言い方の、静かだが、しかし毒々しい位の真意をこめた調子に対して、相手に眼をやりながら、しばらく黙っている。しかし又、殆んど表面には何の反感も現わしていない淡々たる語調で)ありがたいが、その褒め言葉は返上しよう。私はファッショでさえもないからね。せいぜい国際的ルンペン。……駄目さね、もう。つまり、倭寇のキンを抜かれたやつ――デゼネレートした倭寇さね。ハハハ……(笑いながら調子を変えて柴田に)だが、兄さんも、いい
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