して此の家を支えて来たかさえも、兄さんは知りゃしないんだ。何よう言っていやがる。
誠 (真青になり、しばらく黙っていた末に、双葉に)そんなに僕の食費は足りないかね?
双葉 いいえ、そりゃしかし、兄さんだって社から貰えるお金が、そんなにたくさんは無いんだから――いえ、そんな事なんでもない。(欣二に)私は自分の事を犠牲になっているとも、苦しいとも、考えたことは一度だって無いわよ!
誠 ……そうか。そりゃ、僕が悪かった。……そうか。……(柴田に)お父さん達をそんなに食いつぶしていたとは、僕は思っていなかったんです。僕の入れているもので充分だとは、まさか思ってはいなかったけど――忙しいのと……月給が安いんで……ついウッカリしていて……(双葉に)フーちゃんすまなかった、僕ぁ――
三平 (スッカリ酔って)ヒヒヒ、えらい所で、足もとをすくわれたねえ。だから言わん事じゃない。
柴田 なに、そ、そんな、そ、食いつぶしていたなんて事があるものか! 多少そんな事があったとしても、なに、そ、そりゃ、お互いで――親子兄弟の間で、そんな事ぐらい――
誠 僕ぁ、明日からでも此の家を出て行っていいんです。
欣二 アラアの神よか、糞でもくらえ! ハハハ、見ろい! 兄さんなんか、そんなえらそうな事を言っている暇に、もう少しおせいさんとでも仲良くするんだなあ。オアズケは、お互いに、つらいや!
誠 …………。
欣二 批難してるんじゃないよ、それでいいんだよ。おやりよ。いろんな手でいじくり廻された食い物と言うもなぁ、食慾をそそるもんらしいからな。(両手で顔を蔽うせい子)ねえ! (その方へフラリと寄って行った欣二が、しなだれかかるようにしてせい子の肩に手を置こうとしたトタンに、酔った足が何かに蹴つまずいて前のめりに倒れそうになる。倒れまいとしてせい子の肩を掴んだ片手に力が入って、先程、お光のために裂けたひとえの着物の肩口のへんが、再びベリベリと音を立てて、今度はモロにわきの下までやぶれて、折から下着なしに着ていたことゆえ、わきの下から乳のあたりまで、白い素肌がまる見えになる)
三平 こら、こらお前!
柴田 欣二! (これも立って行き、欣二を押し返しながら)
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(せい子が素肌をかばいながら、身をちぢめて食卓に突伏す。その他の人間は全部立上ってしまっている)
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双葉
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