、お前達の力は弱かったと言うかもわからぬ。よろしい。私の言うのはそこだ。お前達の考えを仮りに正しいとしょう。すると、その正しい考えを以てしても、国民の間にそれほど弱い力、殆んど無いに等しい弱い力しか作り出し得なかったところの、国民全般の無知と無能――つまり日本人の低さだ、これに対しては国民全体に責任が在る。お前達にも無いとは言わさぬ。つまり右翼から左翼の一切合切をふくめて、今言った広い意味での責任が在るのだ。そして私の考えでは、これこそ、最も根本的な戦争責任だ。明治維新以来、日清日露の両戦役から第一次世界戦争、それから今度の戦争――その全体を通じて、全体としての日本国民が歩いて来た一歩一歩にそれが在る。今度の戦争だけに限った十年間位の責任を問うだけであったら手易いことだ。が、それでは何の役にも立たぬ。それでは日本は生れ変り得ない。日本は今、明治大帝や伊藤博文までさかのぼり、その時分からの国家の歩み方の検討をしなおさねば、生れ変るわけに行かない。今、私は敗けたから、こんな事を言うのではない。此の際、勝っていようと敗けていようと、それに関係無く、遅かれ早かれ日本は、それにぶち当らなければならんのだ。つまり、これが日本の運命だったのだ。運命なぞと言うとお前は又笑うだろうが、運命と言うのは、つまり必然性と言ってもよい。過去から現在に至る無数の事がらの積み重なりの、のっぴきのならぬ結果のことだ。それを一つ一つときほぐして、その中に本質を見つけ出さねば、ホントの日本の再建は起り得ない。私は及ばずながら、歴史を学んでいる人間の一人として、これからそれをやろうと思っている。やって見せる。それを私は――(喘いでヒッと言うような声を出して絶句してしまう。疲れ切っているところに、昂奮して長々と喋ったので、力が尽き果てたのである)
双葉 もう、よして下さい、父さん! もう、やめて! やめてちょうだい!
柴田 ……(しめ殺されそこなった鶏が、もう一度息を吹き返そうともがいているように、首を伸ばしたり、ちぢめたり、両手で食卓の上を掻きむしったりしながら、切れ切れに)……いや、私がな、この、闇買いをしないでやって行きたいと思っている事だって――そうだ、小さな事ではあるが、言ってみれば、実は、それに関係が有る。――いまどき、闇買いをしないではやって行けない事は、いかな私だって知っておる。また、自分
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