、オツリキな、へんてこな加減のもんだぜ。そいつは、てめえがダラシがねえからと来るだろうが、そりゃまあダラシがないにゃ違いないからね、さよでございますかと言うだけで、そんで、しょうがねえもんなあ、ハハハ! ことわっておくが、オアズケはごめんだぜ。オアズケを見せびらかされたって、腹がクチくなるか?
柴田 (それを押しとどめて)もう、黙んなさい欣二! もういいから!
三平 ハッハハ、腹がくちくなるか、はよかった。全くだよ。そんな高級らしい事をガアガア言いたくなるのが、実はただ腹がへっているという原因から来ている。胃の腑のかげんです。栄養失調の結果の精神失調ですな。そんなもんさ人間なんて。はだかになってしまえば、とどのつまりが、食い気と色気。餓鬼です、要するに。こめんどうな理屈を言い合ったって、どうなるものかね。家庭の平和がみだれるだけ。ここの内じゃ、二人三人寄るとたちまち議論だ。久しいものさ。いいかげんに、よそう。とにかく今日はよしなさい。そんな事よりも、問題はこのすきっぱらさ。おせいさん、なんか、もう少し食べるもの無いかね?
せい ええ、でも、――
双葉 私は、だけど、ちい兄さん、いけないと思う。そりゃ私なぞ、誠兄さんの言うこと、よくわからない。よくわからないけど、こうして、つらい思いをして、働いて食べて行ってる貧乏な人達のために都合の良い世の中が来なくちゃいけない、来させるようにしようと言う考えの、どこがいけないの、え、ちい兄さん? 兄さんはただイコジになっているだけだわ。そうじゃありませんか。腹の奥の奥の奥では、ちい兄さんだって、それを望んでいるんだと私思うわ。そうじゃなくって? 私は――私、今とてもつらい、つらいけど、そいでも、まだこれで以前の時代より、良くなったと思うの。本質的によ。本質的に良くなる望みが出て来たと思うの。本質的に良くなった、良くなる望みが出来て来たという事を認めたら、その事から今差し当り起きて来ているいろんなつらい事位がまんして、こらえて行かなくちゃならないわ。そして、そんな事を自分の手で順々になおして行かなくちゃならないのよ。
欣二 双葉、そいじゃ、お前のその顔のキズをなおして見ろ。ヘッ、お前のツラなんか此方から見るとバケモノだぜ、いえさ、もう少し経ってお前に恋人でも出来てからだな、今言ってるような事が言えるか?
双葉 (カッと見ひらいた両眼
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