た聲で
「だから……そうなんですよ。さつき、自由が僕らに與えられたのはウソだつて僕が言つたのは、その事なんですよ」
「あら、どうして? それとこれとは、違うわよ」
「……同じだなあ」
「だつて、そんな事言つて、あなた、貴島さん、じや、何をあなた知つてるの? いえ、あなた、どんなもの突きつけられてんの?」
言われて貴島はケゲンそうな目をしてルリを見ていたが、しまいに、
「そうだなあ、知らんですねえ、なんにも」あと、ニコニコ笑つた。釣られてルリもその子供らしい言い方にまだ涙の溜つている目のまま、笑い出した。何かが内側から開いて來るような笑い顏であつた。
「つらいわあホントに、あたしたち!」しかし、つらそうでは無く、既に快樂のことを語るように、
「だけど、どう言うんでしよう男の人なんて? こんな事を言うの。そんなに大げさに考えるなよ、ルリちやん、たかがタッチに過ぎないじやないか。人と人とが握手するだろ、手と手がタッチするのさ、皮膚と皮膚が。そいから、ホッペタとホッペタ。そいから、唇と唇。キッスだあ。そいから、……すりやあ、惡い氣持はしない。するてえと、どこからどこまでが善くつて、どこからど
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