ルリからピンで突かれたそうです。ルリはまだ怒つた顏をしていましたがしばらくしてプイと立つて小舟を次ぎ次ぎと渡つて何處かへ行つてしまいました。何が何やらさつぱりわかりやあしませんよ。その晩どんな事があつたのやらわかりやしません。貴島に聞いても要領を得んのです。どうでもいいでさあそんな事。ヘッ! これから僕は久保の會社へ行くんです。爭議がひどい事になつているんですよ。や!」言うなり佐々はスッと玄關を出て行つた。
佐々の話に私は解説を附ける事はしない。と言うよりも私には出來ない。彼の話がどの程度まで本當であるか否かも私にはわからなかつた。それをユックリせんさくしている餘裕も實は私になかつた。
というのはすぐその次の日の早朝、國友大助がヒョッコリ私の前に現われたのである。
22[#「22」は縦中横]
氣がついて見ると、私は人が訪ねて來たことばかり書いている。曲《きよく》の無い話だと思うが、事實だから仕方が無い。私は「書齋の徒」だ。外に出れば、ただ裏町や場末や山野をウロつきまわつては、名も無い人たちと交るだけで、それもただ常識はずれの、おかしな、何の役にも立たぬことばか
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