、死んだ父のことは考えます。
なつかしいのです。そして、スナオに、父の前に出ても、なんだか以前ほど、うしろめたい氣はしないように感じます。父は、僕を、どこからか眺めて、靜かに笑つてくれているような感じがするのです。
僕はアヤフヤな人間ですから、今後も動搖したりヘンテコになつてしまつたり、いろいろになるだろうと思います。それは、しかたが無いと思うんです。しかし、たとえどんなふうになつても、今後は、自分のカンジンの心持だけは、ゴロツキだつた時分のようにはならないだろうと言う氣がします。
結婚をすませ、タミ子の入院などの事を一應かたづけましたら、久しぶりにルリと一緒にお訪ねしたいと思つています。
底本:「肌の匂い」早川書房
1950(昭和25)年11月10日初版発行
1951(昭和26)年11月10日4版発行
初出:「婦人公論」
1949(昭和24)年8月〜1950(昭和25)年7月号
入力:伊藤時也
校正:伊藤時也・及川 雅
2009年5月23日作成
青空文庫作成ファイル:
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