た美少年だ。……頼みますよ。明日出征するんだ。……可哀そうじやないか。ね、わかつてくれ。死ぬんだ、もうすぐ。頼むよ、おれの弟だと思つて……いやいや、別にどうと言つて、どんなふうに遊ばせてくれてもいいんですよ。……どうか好きなように……」そんな言葉が、フラフラしながらMさんにつかまつて立つている僕の耳に殘りました。すると女が何か答え、Mさんが、家の中へ僕を突き入れるようにして、自分は小走りに立ち去つて行つてしまつたようです。
「どうぞ……」
と小聲に言つて、僕の身體を抱き取つたのは、聲の調子やなにかで、中年過ぎの女だつたようです。ムッと、一種の匂いが僕を包みました。もう夜なかを、とつくに過ぎた時間だつた筈で、その女もいつたん寢どこに入つた後でMさんに叩きおこされたのではないでしようか。寢どこで暖められた匂いのようでした。……もちろん、こんな事をその時の自分が考えたりしていたのではありません。すべてが、後から切れ切れに思い出したことを書いているので、その時は醉つているし、眞つ暗だし、半ば無意識で、夢を見ているようでした。どんなふうにして、その家にあがつたのか、どんな所を通つてその室に入つたのか、全く記憶が無いのです。それから、僕は、いつときグッスリと眠つたらしい。
今度眼がさめたら、フトンの中に横になつていました。わきに誰か一人寢ているんです。女でした。最初のとちがつた、若い女です。匂いがちがいます。それに、暗い中で身じろぎをする身體の調子もちがいます。
女は僕が眼をさましたのを知つたのか、半身を起して、枕元に置いてあつたらしい水さしからコップに、コプコプと言わせて水をつぎ、默つてコップを僕に渡してくれました。それを飮みながら、女の方を見ると、まつ暗なので顏も姿も、まるで見えませんけれど、それでも眼が馴れたか、暗い中にもう一段黒く、かすかに頭髮のシルエットと、それから薄白い顏のリンカクと、その下に肩と胸らしい所が見えました。と言うよりも、後から思い出して、そんなものを見たような氣がしただけかもわかりません。いやたしかにそうです。ホントに見たのであつたら、その顏を、もうすこしハッキリおぼえている筈です。それがまるきりおぼえが無いのですから、やつぱり見たような氣がしただけです。
そのくせ、その瞬間に、女が肩も胸もむき出しの裸になつていることが僕にわかつたのは、どうい
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