い見方をしていて、それをしみじみと本心から語つている。語り口は、例の通り輕いものだが、その底に一時のものではない嘆息がこもつていた。話している間に私も何時の間にか、この男の訪問の目的をせんさくする氣持を忘れて、久しぶりの舊知との會話を樂しむ氣持になつていた。
その中に國友は、今までの話の續きのように氣輕な調子でヒョイと
「いつかお目にかかつた時に、あなた、D興業會社の社長秘書の貴島という男に會うんだとおつしやつていたが、お會いになりましたか?」
「………會いました」
「ごく最近?」
「いや、しばらく前だ。君にお目にかかつたあの晩遲くだつたかな」
「………それからお會いにならない?」
「會わない。どうして?」
「いや。…………貴島君、今どこにいるか御存じありませんか?」
「住んでいるのは荻窪だが………」
「そりや知つていますがね。………横濱へんに今居るらしい事も知つていますが、ハッキリわからない。一度是非會いたいんですが」
「…………さあ僕もよく知らないんだ」
佐々の話の内容がパッパッと私の頭に閃いて來た。
「もし御存じなら教えてほしいんですがね」
「いやほんとに知らない」
「そうですか………」とおだやかな調子で眼を伏せてしばらく何か考えていたが、今度はジロリと見上げて「まさか、お宅にいるんじやあないでしようね?」
「………どうしてそんな事を言うの?」
不快をかくさない私の調子に、今度は詑びるように
「そんな氣で言つたんじやありません。大至急にあの男に會わなきやならないので、つまり、急いでいるもんですから、ついどうも……」
佐々の話が事實だとすると、この連中は貴島に復讐するために、そのありかを追求している。うつかりした事は喋れない。………
そこへ家人がやつて來て「ちよつと」というので居間の方へ立つて見ると「先程から、すぐそこの角に變な人が二人立つています。今來ているお客さんと一緒に來た人達のようですけど、とても人相の惡い氣味の惡いような――」と低い聲で言うので、私は下へ降りて木戸口を出てそちらを見た。私の家は袋小路の突當りにあり、その袋小路を出て二十歩位の所が小さい四つ角になつている。その四つ角の兩側に洋服を着た男が一人ずつ立つていた。二人とも若い男で、一方は普通の顏をしているが、もう一人の男は顏中むざんな切り傷だらけで、その爲に片眼がつぶれているようだ。物
前へ
次へ
全194ページ中84ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング