とバーやカフエの女給などがまじつているだけだ。それでも住所録や手帳から書き拔いてみると二十名ばかりあつた。中の十五六人が女性である。しかしいずれにしろ戰前から戰爭末期へかけての記録であつて、終戰以後の激しい世態の動きの中で、それらの人々の住所はもちろんのこと、境遇なども、以前のままである者はすくないのではないかと思われた。
私がリストを作つている間、佐々はムッツリと怒つたような顏で一言も口をきかなかつた。重大な用が自分にはあるのに、こんな愚劣な事で時間を取られるのはやりきれない……そんなふうに思つているらしい。
作り上げたリストを私は默つて彼の前に出した。
「すみませんでした。じや、これで僕は失敬します」
「貴島君はまだ横濱の船の中に隱れているの?」
「え?……」佐々はジロリと私を見て「どうしてそれを知つているんですか?」
「四五日前に手紙をくれてね、そんなような事が書いてあつた」
「あそうか。………そうです。もつとも船にはもう居ないようで、又ほかへ移つたらしいですがね」
「ぜんたいそんなにしていなきやならないなんて、どういうのかね?」
「黒田組と束京のゴロツキ連中……そいつらと黒田組の間で取引きの事でゴタゴタがあつたらしいんですがね、そん中に貴島がまきこまれていて、と言つてもあの男の事ですから、詳しい事情も知らないままで、思いきつた事をやつちまつたらしいんです。先方のゴロツキの頭かぶの奴をなぐりたおしたか斬つたかもしたらしい。詳しい事は言わないんです。そんな事でモツレがひどくなつて、しばらく前からヤッサモッサもんでいたやつがこの一週間ばかり急に手荒い加減になつて來たんです。今となつては、先方では仕事のモツレの事よりも、貴島のような若造に勝手な事をされちやあ、そのままにしておけないと言うらしくつて、もつぱら貴島にとりついて來ているようですね。二三日前も黒田策太郎と貴島の間の連絡係をやつていた黒田の子分が、夜遲く貴島の所へ行つた歸りに野毛の裏街で袋叩きにあつてあばら骨を三本ばかりおつぺしよられて、今死にそうになつています。まあ、貴島も一寸あぶないですねえ。じやあこれで」
言い拾てて立ち上つた。それを玄關に送り出しながら私の頭に國友大助の事が浮び上つていた。東京の頭かぶの男というのが、それでは國友の事であろうか?
「綿貫ルリはその後どうしているか知らんかね? 横濱
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