の二つは、どんなふうにつながっているか、またどんなふうにはなればなれになっているか? それとも、あなたの平和運動は、あなた自身の考えによる、またあなたの属している勢力による、戦略的見解から割りだされたところの「独立前哨」といったふうのものでしょうか?
私もまた戦争反対論者であり、再軍備反対論者であります。しかし一時的な戦術や戦略として戦争や軍備に反対しているのではありません。また、感傷的に、戦争のない、軍備の不必要な世界の可能を夢想しているのでもありません。また、ソビエットがつねに自由主義諸国にたいして侵入してくるスキをうかがっていると思いこんでいるアメリカ政治家ほど、被害妄想的では私はありませんが、同時に、軍備など何ひとつなくともソビエットが侵入してくる可能性は絶対にないなどと狂信するほど無邪気でもありません。
私が戦争反対と再軍備反対のためには、同じくそれらに反対する人とならば、いつでも協力したいと思っているのと同時に、一時的な戦術として、それらに反対している人たちを、末ながく信頼するわけにはいかないのも、そのためであります。
日本のマルクシストや共産主義者のなかにも、絶対的戦争反対論者がまるでいないとは思われません。しかし大多数はいま、一時的戦術的に反対しているのだと私は見ます。つまり彼らの現在の基本方針は「反米」におかれている。そして日本はいまアメリカの戦力に組みこまれかけている。しかもその戦力は仮想敵としてのソビエット圏諸国の方へむけられている。
したがっていま、日本国内で反戦と再軍備反対をとなえて、大衆をその方へ持っていけば、もっともよく反米と援ソの効果をあげることができる。――そういう反戦論者や再軍備反対論者がひじょうに多いと私は見ます。そういう人びとは、情勢がさらにかわれば、または逆転すれば、反対はしなくなるだろうし、逆《ぎゃく》に主戦論者になったり軍備賛成者になるだろうと思われます。戦略戦術による百八十度転換というやつです。共産主義者たちは、これがなかなかうまい。実例は無数にあるが、なかでもあざやかだったのは、第二次大戦中、ソビエットが最初ナチス・ドイツと敵対していたのが、中途で結び、さらに敵対するにいたった姿だとか、終戦直前の日本にたいする態度などで、われわれはこれを忘れることができません。
それほどあざやかとは言えないが、日本の共産主義者たちも、似たようなことをチョイチョイやってきました。このようなことは、私ども共産主義者でない者の目には、ばあいによって下劣なことに見えますが、共産主義者にとっては当然なことなのでしょう。だから、これからも戦術的必要が起きればチョイチョイやらかすでしょう。
つまり、今後そうすることがソビエット圏諸国の利益になると見たときには、共産主義者たちは、戦争反対や再軍備反対を言わなくなり、積極的に再軍備運動に乗りだすかもしれない。そうなる可能性がひじょうに強い。
もしそうなったときに、あなたはどうなさるのでしょうか? いぜんとして反戦論者・再軍備反対論者としてとどまるのですか? それとも、あなたもともに百八十度転換して主戦論者・再軍備賛成者となられるのでしょうか? そして、あなたは前記のとおり、マルクシストか少なくともマルクシズムの部分的把持者であるらしいことを私は忘れないで、この質問をしているのであります。
ごらんのとおり、「もし」「もし」を重ねたうえで私は質問をしています。これはすこしコッケイに見えるにちがいありません。しかし、私にこんな質問を持ちだす理由はあるのです。それはこうです。もしそうなったときに、あなたがいぜんとして反戦論者としてとどまれるばあいは問題はありませんが、もし百八十度転換をなさったばあいには、それまであなたの反戦論に影響されたり指導されたりして、あなたの後から歩いていった大衆はどうなるだろうかということです。
中であなたと同じように転換できる人たちはそれでよいでしょう。それのできない人たちは、ずいぶんつらい思いをしなければならないでしょう。そういう人たちは、私の同胞でありますから、それを見ている私もつらいだろうと思います。人も自分もつらい思いはなるべくしたくない。それに、単につらいだけでなく、そのことによって日本はかなり混乱するでしょう。そういうことは避けられるならば、避けた方がよいと私は考えます。そのため、いまのうちに、あなたの反戦論が絶対的反戦論か条件つきの反戦論かを知っておきたいし、あなたとしてもそれをハッキリ表明してくださる責任みたいなものがなくはなかろうとも思いますが、いかがでしょうか?
いうまでもなく1に書いたことや2に書いたこととつながった形で、私はこれらのことを知りたいと思います。
じつはいまの日本には、あなたとよく似た
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