(これは先刻此処から逃げて行った手先である)いけない、こりゃ先程の乱暴者だ。強いぞ!
仙太 橋を切落して罪とがもねえ民百姓を川へ追落して置きながら、人の事を狼藉呼ばわりをして、よくまあ口がタテに裂けねえことだ! 手を引かねえかっ! (ワッと叫んで手先達の手元へ飛込んで行きそうにする。手先等ギョッとして一、二歩退る)……だが俺だとて無駄な殺生したくはねえ。手を引きな。たってとあれば相手になる。これを見てからにしろ! (いいざま刀をスッと抜いて、ムッ! と叫んで、傍に立っている茶店の表の角柱の荒削り三寸角ばかりの奴をズバッと切る。グラグラグラと茶店の屋根が傾く。たまらなくなってワーッといって元来た方へ逃げ去って行く手先等)チェッ!(お妙等に)さ、早く逃げなせえ。
お妙 どなた様だか存じませんが、危いところをお助けくだすって!
仙太 そのお礼にゃ及ばねえ。こうなれば一揆もまず望みはねえ、此処まで出て来たあんた方も口惜しかろうが、はたで見ていた俺も口惜しい。が仕方がねえ、村へ帰ってまた時節を待つのだ。
お妙 はい、ありがとうござります。私どもは植木村の者でございますが、このご恩は死んでも忘れ
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