仙太 兄さん! 兄さん! お願いでごぜます! お願いで……。
弥造 どけっ! (仙右衛門を叩くために振上げた竹で仙太の顔をガッと撲る。仙太がヒョロヒョロとなるところを刑吏と喜平が散々蹴倒し踏みにじる。はずみを食って仙太土手の傾斜をゴロゴロ転り落ちて来る――舞台前端へ)
仙太 ウーッ! 兄さあんっ!
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(役人、喜平、手先、子分等が罵りながら三人の百姓を突転ばし、青竹で叩きつけながら歩ませて左手奥へ去る。途中、仙右衛門が何と思ったか高札の棒にしがみついて離れようとしないのを、手取り足取り、散々に青竹で叩き離して追い立てて去る。土手の向うからは群集がそろそろ首をもたげて、おびえた顔で見送る)
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段六 (土手を駆け降りて来て)仙太、仙太! 痛えか? ああ、こりゃ、こんな血だ! 仙太よっ!
仙太 (歯をバリバリ音させて)段六、おら、おら、く、く、くやしくっ……! (また思い返して)ウーン、いいや、お願いでごぜます! お願えでごぜます!
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(斜面を這い上り、血を吹き出している顔を草にこすり付けて辞儀をしながら、またいざるようにし
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