ば脱走して行け。貴公、命が惜しくなったのだ。
仙太 俺が? 冗談いっちゃいけねえ。それくらいなら初めっから来やしねえ。どう間違ったってこんなヤクザの体一匹投げ出しあ、それで済まあね。俺のいっているのは、沢山の人様のことだ。フラフラッと人気にくっついて此方へ来る連中は、またフラフラッと向うへ行っちまう連中だ。あんた方あ、天下何とかで民百姓貧乏人のことばかりに肩を入れて考えて下すっているのあ、ありがてえ。がだ、俺達の頼りにするのは貧乏人だけど、また、これで、何が頼りにならねえといっても貧乏人ほど頼りにならねえことも考えとかなきゃならねえというまでさ。
隊一 だが寄場人足がわれわれの味方で無くて、他にどんな味方があるか?
仙太 だからさ……。(いい続けようとするが止めて)とにかく俺にあいに来た者に、俺が会わねえ先に余計な油を掛けるのは止していただきてえ。
隊一 ふん。……挙兵以来、戦功抜群というのを鼻にかけて増長するなよ。百姓上りの無頼の徒が、士に向って何という口を利くか!
仙太 何だって? それをまた……。ま、いいや。チョイと急ぐから、まあごめんねえ。(右手へ去る)
隊二 百姓め、推参な!
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