の三人。二人は士――水戸浪士加多源次郎と長州藩士兵藤治之。他の一人は、一本刀素足草鞋、年配の博徒だが、身なりにも態度にも普通の博徒でなく名字帯刀御免の郷士あがりの者らしい点が一見してわかる甚伍左)
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仙太 お願えでごぜます! お願いいたします。
加多 控えろ! (三人は急用のために行手に気をとられて通行していたところを仙太に不意に飛び出されて、少しギョッとして立止る)……何だ?
兵藤 (土手下の物音で、下を眺めて悟り)ああ。(と見廻して高札に目を止め、読みかけ、他の二人にも指して見せる。三人黙って読み終る)……。
加多 ……さようか。が、お願いとは何事だ? 詰らぬことをいたして通行の邪魔すな。全体お前は何だ。
段六 へい、それにありまする三人の内の一人、百姓仙右衛門の弟仙太郎と申しまする。百叩き御所払いの御仕置につきまして、御所払いだけを御赦免お願いいたそうと存じます。御願書をこうして持参いたしましたが、私どもばかりの名だけではお取上げになりましねえのは解りきっていますので、ご通行の皆様にお名前と爪判を頂戴いたしておりますんで。どうぞ、お慈悲をもちまして……。
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