とあらば……(いう間も無く長五郎が襲いかかって来るので、これも刀を抜いて一、二合あしらう。長五郎、相手が抜いたのを見て、一つ二つ斬込んだ後、パッと四、五歩飛退って気合いを計っている。今井、眼は長五郎の方を睨んで身構えしながら)……お妙さん、この男は?
お妙 長五郎さんとやら、仙太郎さんを斬りにきた人……。あれ、危い! ああ……。
今井 出してやること、ならぬ! 刀を引け! 引かねば……(グッと上段に構えなおす)
長五 (ツツと後へ退りながら)斬って見ろ! 二本棒め! 畜生! ち、ちッ! (腰を引き、突きの構え。そのままで間。今井がオウ! と気合いをかけて一二歩出る。長五郎が右へジリッと廻り込み、突き出した刀がスッスッスッと揺れはじめる。今井の斬込みと、長五郎の必死の突きの一瞬前)[#地付き](道具廻る)
[#改段]
5 筑波山麓道
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カット明るい晩春の日の真昼。
沼田宿より筑波山上に通ずる一本道。舞台正面に道をふさいで、急拵えに生木の棒杭で組上げられた物々しい柵と中央の門。左袖に花をつけたおそ桜二、三本。柵の前、門の両側にズラリと突立てられて並んだ抜身の長
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