れも激励してくれるし、
その劇団の人たちもよろこび迎えてくれますので
そこへ入って勉強をはじめました
そのため山田家を出て
劇団の先輩の女優のかたの部屋に住むことになったのです
もうその頃は戦時状態はますます焼けひろがって
もうどうしても東洋だけの問題としては片づかない事がハッキリして来た頃です
軍部や政府の手で
文化方面のすべての事から自由がうばわれ
演劇の世界でも、それまで有った
左翼的な新劇団などが
おさえつけられたり解散さされたりした後で、
私の入ったG新劇団も、本式の公演をやめてしまって
工場や農村や軍の施設への慰問のための
移動公演などを主としていました
後で私にわかった事は
劇団の中には、かつての左翼くずれの人たちも、たくさん居て、
未だにそれらしい事を言ったりしたりしていながら
戦力増強のシバイも真剣に腹からやっています
その関係が私にはよくのみこめませんでしたけれど、
とにかく指導者の人は山田先生のお弟子さんであり
ケイコのはじめには宮城をよう拝し
公演開幕の前には「国民の誓い」を唱和する式で
それも腹からまじめにやっている人が多いのです
私はそれを信じ
よろこび勇んで先頭に立って働いた
それに劇団の中だけには自由で進歩的な空気があった
そして何よりもそこには
まだ芸術らしいものが有ったのです。
戦力増強のためと言うことと
自由と進歩的であるとことと[#「あるとことと」はママ]芸術と言うものとが
どんなふうに組み合わされているか
ぜんたい、組み合わせる事の出来るものかどうか
考えて見ようとする人も居なければ
考えている暇もありません
山田先生から吹き込まれた理窟を
実際に実践するのは此処だとばかり
夢中になってシバイをしたのです

シバイというのは妙なものです
役者というのはおかしなものです
というよりも、この人間のカラダというのが
もともと、おかしな、変なものかも知れません
シバイはからだでするものです
はじめは頭がそう思ってカラダを持って行くのですけど
いったんカラダが動き出すと
カラダの法則と言うものが有るかしら?
カラダは一人で動き出す
頭のいうことを聞かなくなる時がある
逆に頭を引きずって行ってしまう時がある
だからカラダは楽しく、恐ろしく、やめられない
だからシバイは楽しく、恐ろしく、やめられない
役者はみんな少しずつ[#「少しずつ」は
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