す。
どうせ、おなぐさみでございます
失礼は前もっておわび申して置きます
あなたの前にはおいしいお酒があります、
あなたの横には美しい友だちがおいでです、
音楽もはじめていただきましょう(右手へ向って手をあげて合図すると、バンドがユックリした曲を奏しはじめる)
わたくしも、失礼いたしまして、
すこしお酒をいただきます。(階段をおりて来て、そこに一組だけ置いてある大理石の小卓に向って椅子にかけ、卓上のリキュールのビンからコップにつぐ)
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(そのコップを持ち、コップ越しに、ウインク。花が開くように笑って)
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どうぞ、ゆっくりと、お気軽に、
チェリオ!(飲む)

ホントに酒は良いものです
そうではございませんか
雨が降って風が吹いて
自然と人は入れまじり音を立て匂いをはなち、
乱れ、集り、こりにこって、酒になる!
スピリットとは、よくいった!
ほほ、それ位のカタカナは私だっても存じていますよ。
だから人の思いが、こりにこって
恋しいにつけ、憎いにつけ
人の手は酒に行きます。
そうではございません?
ほほ、私の手も酒に行きます。(と、もう一つ酒をついで)
チェリオ!(飲む)

とかなんとか、上品めかして言いますけど、
ありようは、ただ、なんでもいいから飲みたいのよ
緑川美沙、実は、女しょうじょうだあ!
は、は、は、は! まあ、お聞きなさい
カタカナも知っていますが、こんなものも知っています

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(朗詠)
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さかしらを言うと
酒飲まぬ人の顔
よくよく見れば
猿にかも似る

猿になっちゃ大変だ。(ふくみ笑いをしながら、又つぐ)
チェリオ!(飲む)

さて、その次ぎに良いものは、
恋愛でございます。
恋愛。こい。ゲスは色ごととも申します
せつなくて、やりきれなくて、駆け出したくなり、
じれてじれてじれぬいて、しんからシミジミうっとりして、
しまいには裸かになってふるえます
それが恋。
恋は人を裸かにいたします、
私も裸かになりました。
その話をいたしましょう。
と申しても、たかの知れたこれだけの女一人
ただもう身体と心の裏表から隅々までを
キレイきたないのお構いなしに
着ているものをぬいでぬいで脱ぎ
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