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壮六 な金吾よ! だから、もっと飲め! クヨクヨするなって! なにもお前、世間に女あ一人っきりじゃ無えや!
金吾 そんな、もう、かんべんしてくれ壮六。お前酔っとるよ。
壮六 俺が酔っとるなら、お前は血迷って、タブラかされてるんだ。今も豊ちゃんと話してたとこだ。春子さまなんてお嬢さんはな、ありゃお前、言わば見た目ばかりパッと綺麗な銀流しだあ! なんにならず、あんな女が! 諦らめろ、よ! 第一お前、あの人あ、もう人の奥さんだ!
金吾 又それを言う。そったら事あ無えと言ったら! 諦らめるにもなんにも、そんな事、はなっから俺あ考えた事も無えだから。
壮六 だら、嫁え貰えよ金吾。それが正の事なら、嫁え貰って見せろい!
金吾 そねえな無理な事言ったとて、へえ、そんな――
お豊 だけんど、どんなお人だかねえ、その春子さんと言う人? あんたから、それほど思い附かれるなんて、うらやましいみたいだ。
金吾 そ、そ、そんな、お豊さん! ちがうと言ったら、俺あ、そんな――
壮六 見ろっ! ケツ! そう言われただけで、まるっきし顔の色変えちまって、そのテイタラクだ! 俺あ腹が立つんだ、クソ! 馬鹿クソ野郎の
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