ら。わけはそれだけなの。それ以外にはわけはないのよ。いけない? でも仕方がないの。私って、自我と言うものが無いのね。生れつきかも知れないし、甘やかされてばかり育ったせいかもしれない。とにかく、こうだもの。仕方がないじゃありませんの。……ね、もうかんにんして! もう、かんにんしてよ敦子さん!(泣いている)……私のことをそれほど心配して下さるあなたのお気持よくわかるの。それから、それほど私のことを考えて下さる香川さんのこともありがたいと思うの。香川さん、今度ご一緒にここに来て下さったのだって、どういうお気持だか位、いくら、私が馬鹿でも、ちっとはわかるわ。でも、敏行とはああしてお約束したんですし、今度父と一緒にフランスに渡ってナニすれば私はもう敏行の妻なんですから。……ね、かんにんして敦子さん! 香川さんにも、かんにんして下さいって、あなたから、よく言ってね!
敦子 …………
(相手の言葉のあまりの真卒さのために、なにも言えなくなっている。遠くで山鳩が啼く。……クスンと言わせて涙をすすりあげて、言葉だけは元気よく)いいわ! 春さん、もう泣かないで。わかった!
春子 わかった? かんにんしてく
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