痰ネいかしら。ずうっとせん、春子さんをたずねて私も一度行ったことがあるのよ。そりゃひどい所でね、事務所なんて言うよりまあ土方の飯場だわね。働いているのも荒くれた人たちばかりで、場所だって、あなた、いきなり山の横腹をたちわって、その片隅にその事務所があるんだけど、鉱石を運ぶ、あれはケーブルと言うんですかね、昼も夜もえらい音がしててね……。
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敦子の言葉にダブって、ケーブルで鉱石を運ぶ音が、ガラガラガラガラ、ガラガラガラガラ、ガラガラガラ。そして時々、何処かでジャーッという音が、谷あいに反響して聞える。
石ころだらけの道を、こちらから金吾が歩いて行く下駄の音。
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村山 (若い工夫、酔っている。ゆっくりとこちらへ歩いて来ながら草津節)……お医者さんでも、草津の湯でもドッコイショ! 惚れた病いは、コリャ、なおりやせぬよ、チョイナチョイナ。
金吾 あのう、ちょっくら、うかがいますが――
村山 (立止って、ジロジロ見ながら、まだうたっている)……惚れた病いも……なんだよ?
金吾 東洋鉱山株式会社つうのは、こちらでございやしょうか?
村山 東洋鉱山
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