A馬鹿といっていいか、強い力で押されると、押されたとうりになるの。それは金吾さん、あなただってわかっているんじゃないの。ホントに、私はね、この二、三年、春子さんのことや敏ちゃんのことが心配になって、次から次とあの人の後を追かけ廻すようにしてきたのよ。ところが春子さんの方じゃ、逃げるの。そりゃね、私にあんまりこれ迄心配をかけてきたので、もうすまないからと言うんで逃げ廻ってる春子さんの気持は私わかるの。しかしそういう風にして逃げ廻っているために、なお一そう、私に心配をかけているということには気がつかないの。そういう馬鹿な人なのよ。そいで、この間ね、やっと横田たちの秩父のセメント山の事務所に、春子さんが住みこんでいると言う話を聞きつけたんで、私出かけて行ったの。そしたら、事務所と言うのは名ばかりで、まあ汚い飯場ね、そこの飯炊き――女中さんみたいなことをやらされていたらしい。ところが、私が行った時にはもう春子さん、そこには居ないで何処か行っちまったと言うの。そいで仕方がないから、東京の心当りをあちこち探した挙句、ヒョイと気がついて、もしかするとこちらへ春子さん来たんじゃないかと思ったんで、私あ
前へ 次へ
全309ページ中162ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング