v]入れる。それらの足音。全部すんで少し静かになる)
金吾 (待合所の入口の方から歩いて来て)あの、下りの列車は、こんだいつ頃になりやしょう。
改札 下りは上りが発車してから一分もしねえで到着ですよ。
金吾 そうでやすか。
改札 あんた、乗らねえのかい?
金吾 いや、俺あ人を待ってやすんで、はあ。……(と、そこを離れて、待合所を出て、砂利の上を歩いて、わきの柵の方へ行く)

[#ここから3字下げ]
同時にゴーッと音をさせて上り列車(と言っても大正時代の小さな汽車)が入って来る音。汽車が停り、それに伴ういろいろの物音……
[#ここで字下げ終わり]

壮六 (汽車から飛び出して来て)ああ、いたいた! おい金吾う!
金吾 おゝ壮六! どうしただい、おのしあ?
壮六 おおかた、お前が此処さ来ていると思った。どうだ、まだ黒田様あ、おつきんならねえか?
金吾 うん、まだだ。お昼前から待っているが、どうしただか――
壮六 下りが直ぐに着く筈だから、それかもわからねえ。お前からハガキもらったんで、俺もいっしょに出迎えに来ようと思っていたが、試験場の用事でどうしてもニラザキまで、これから行かなくちゃなら
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