ト行くと、やっぱし足跡は、あの黒田の別荘の方へつづいている、そんで、別荘のわきまで行って、そっちを見ると、別荘の窓の外の降りつもった雪の上に、どうしただか金吾さん、うつぶせにスッポリぶっ倒れている。
寄って行くと、ウーウーとうなっていたっけ。さっき、あおりつけた酒の酔いが出て、そこへ馳け出したもんで苦しくなってぶっ倒れた様子だ。喜助さんが助け起して、肩を貸しながら戻るさんだんになったが、私がヒョイと見るつうと、金吾さんがうつぶしに倒れた所が人間の形にポカリと凹んでいる。それを斜めに月が照らしてるもんでまっ黒に見える。まるで金吾さんの魂が、うつ伏せになって泣いてるようだ。……それ見ていて、私あ、こりゃ駄目じゃと思った。私の負けじゃと思った。……こんだけ、その春子さんつう人を思いこんだ人の心が、私なんずがどう懸命になったとて、もう、どうならず? 私あ、もう手を引きやす。無念じゃが、手を引く。わかってもらえるかなあ壮六さん。私の気持? ホンマに思い込んだつうのは、ひでえもんだ。金吾さんの気持は、もうへえ、法返しが[#「法返しが」はママ]附かねえわ。私あ、そう思いやす。
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