て!
韮山 こ、こ、これ、乱暴な!
本田 はばかりに行くからって言うから、まさかと信用して此方は待っていりゃ……あんまり遅いから出て来て見ると、このザマだ! 話を中途にして逃げると言う手があるかっ!
韮山 そんな、そんな乱暴せんかて! なに、さらす!(二人、組打ちとなる)
三好 ……(登美と共に、アッケに取られて見ていたが、やっとの事で)どうしたんです? 全体、どうしました?
本田 どうしたも、こうしたも、この野郎! 人をナメやがって!
韮山 しゃあから、しゃあから、返さんとは誰も言うとらん! ただ、もう少し待ってくれと、これ程言うても、あんまり話がわからんよってに――。
本田 逃げるのか! よし、逃げて見ろ、野郎!(尚も二人取組合い)
三好 まあ、まあ……(思わず、縁側から飛び降りて来て二人を引分けにかかる。登美も縁側に出て来て見ている)
韮山 痛えっ! わても淀橋の韮山だ。逃げたりかくれたりはせんぞ!
本田 逃げたりかくれたりはせんと言う奴が、こうして、もう、とうに期限は切れているのに、しかも、私の方から何度も足を運んで行っている事を承知していながら、なんで逃げまわるんだ、此の狸め!(ピシリと韮山の頬をなぐる)二三日前から、私は、手前の家をはじめとして、妾の家までサンザンお百度を踏んで、追いかけて歩いているんだ。それを、それを、こんな所に逃げ込んで、シャーシャーとして昼寝なんかしていやがって――。
三好 まあまあ、そんな乱暴なことをしなくたって、おだやかに話しをすれば――。
韮山 (なぐられた頬を撫でながら)だれもシャーシャーとなんぞして居らん! 眠うて眠うてならんから、ツイ知らん間に眠っていただけや。
三好 全体、どうしたんですか?
本田 いやね、先程から、もうサンザン話をして、口がすっぱくなる程言っても、この人にゃわからんのですよ。大体、此の男には誠意と言うものが、まるで無い!
三好 誠意か……(朝の内、堀井博士に就て韮山が自分に対して言った事を思い出し、妙な気特になり、ゲッソリして手を引込める。本田と韮山の叩き合いはいつの間にか、やんでいる)
韮山 だから、いくらそんな風に言われても、無い袖は振れんと、先程から、私はこれ程言うてるやないか! 此処の堀井博士が金を返してさえ呉れれば、たかが千や二千、たった今でも返すからと、これ程言うても、あんたが――。
本田
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