おっ母さんの子でしょう? 私につがせるのが本当だと言う人が多いの。お母さんだって私につがせたいんだわ。私がいくら、兄さんにつがせて下さいと言っても、駄目。本郷の伯父さん……いつか此処へも来てくれたわね……あの伯父さんなんかがお母さんの尻押しをするの。……お父さんはお父さんで、表面は何も言わないでいるけど、勿論、兄さんに家はやりたい。それを又、尻押しする人達がいる。……そりゃもう、いやだわよ。しまいに、お母さんが、御飯の中に毒を盛って兄さんに食べさせようとしたなんて言いふらす人があったり、こんだ、それを聞いたお母さんが、そんな事をしたと言われては申しわけが無いから、私が死ぬんだと言って騒いだり、……それが、なんだと言うと、五万か十万か知らないけど、僅かばかりの財産のためだ。……
三好 聞いた。……
登美 たまらなくなって飛び出して来た。……私が居なければ何とか早く片附いてくれるだろうと思っていると、……伯父さんの話では、相変らず、以前と同じらしいの。……せっかく、せっかく、抜け出せた、ああ何とかなると思っていたら、何ともならないで、又、元の家へ戻って行くんだわ。
三好 いいじゃないか。それでいいさ。……君さえシャンとしていれば、そして諦らめないでネバリ強くやって行けば、その内、なんとかなる。……どこへ行っても大概似たようなもんさ。……凡々として、その日その日の塵や泥の中を、こねくり返して、やって行くのさ。それでいいんだよ。
登美 ……なさけ無いわ。
三好 なさけ無くったって、かまわんよ。
登美 いえ、私の言うのはね、そんな周囲のイヤな事もだけど、それよりも、私自身のこと。……これまで私、チットは人より頭も良いし、生きて行き方に就ても多少は新らしい理智と言ったようなものも持っている人間だと自分で思っていたの。……それが、まるっきり自惚れ。……そんなもの結局なんにもなりはしない。ただ要するに平凡な、馬鹿な、道に迷っている一人の女に過ぎなかったのよ。やっと近頃それに気が附いたわ。
三好 いいさ、俺あ、むしろ、それに賛成だよ。君はもともと大変良い子だよ。僕は好きだ。しかし、ふだんから、君の中にある新しがりやの[#「新しがりやの」は底本では「新しがやりの」]、変に高飛車な所だけは好かん。そこに君は自分で気が附いたんだ。いいじゃないか。……人間ふだん何でも無い時は、いくらでも高飛
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