にそんな事を言うから君は反動だ」と言い放った。私はふきだした。――
 武者小路は、彼の「人道主義」を一度洗いあげ、定義し、首尾一貫したものとして、再確認してみることが必要ではあるまいか、彼自身にとっても、そして、もちろん、われわれにとっても。そうでないと、われわれは、いつか、武者小路を見て、ふきださなければならなくなるかもしれないのだ。そして、われわれは、このように大きな、このように純粋な人を見てふきだしたりはしたくないのである。この人を、お手本にしたり、よりどころにしたり、鏡にしたりして、もっと高いところに到達したいのである。
 これで広津と志賀と武者小路についての一言ずつを、ひとまず終るが、終るにあたって思うことは、これほどまでにすぐれて、他からのサイミン術にかかりにくい人たちでも、自分が自分にかけるサイミン術だけは、避け得ないのだろうかという事だ。
 この次ぎには、四十歳前後の流行小説家たちの数人のことを、その次ぎには戦後派の小説家たちのことを、又その次ぎには共産主義的な作家たちのことを、またその次ぎには、劇作家たちのことを書いてみたい。
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